SINCE 1959 枚方カントリー倶楽部SINCE 1959 枚方カントリー倶楽部
Contribution

10周年によせて昭和44年発行の当倶楽部発行「十年のあゆみ」への寄稿より

倶楽部設立計画のはじまりは箱根湯本から
倶楽部設立計画のはじまりは箱根湯本から倶楽部設立計画のはじまりは箱根湯本から

昭和33年の春、茨木カンツリー倶楽部の理事今田英作氏のご推挙にあづかり、やはり私が設計を担当した西宮カントリー倶楽部の会員であった尾上実夫現理事長より、「新コース設立の計画があるので一度会ってほしい」との御連絡を受けました。

私が、別の用件で小田原の方へ参る日に――それは4月29日、天皇誕生日であったと記憶しています――折良く尾上理事長も箱根方面へゴルフに出かけるので、丁度都合が良いから箱根湯本に一泊して話をしましょうということに打ち合わせが決まり、枚方建設についての最初の会談を湯本の旅館で松田社長、石丸支配人の御三方と行ったのが、枚方カントリー倶楽部との御知遇を得たそもそものはじめです。

新計画について色々お話を承ってみますと計画しておられる場所は以前に別の企画で採り上げられ、その折私が一度現地調査をした地域も今度の計画の一部に入っていることが判り、その一帯ならばゴルフ場としての立地条件を満たしている所に間違いないから、なるべく早い機会に一度現地を拝見に参上致しましょうということになり、私も大いにハッスルして、早速5月10日に現地を委しく案内していただきました。

チャンピオンシップ用コースとして立派なものが出来るそう確信をした
チャンピオンシップ用コースとして立派なものが出来るそう確信をしたチャンピオンシップ用コースとして立派なものが出来るそう確信をした
起工式の様子起工式の様子

その結果用地の形に多少難点があり、且つ地形も相当急峻なため、ある程度大工事を必要とする。また、土質が砂利交じりのやせ地である等の短所もあるが、採算に見合う範囲で土工費を効果的に投下することによって、之はチャンピオンシップ用コースとしても立派なものが出来るとの見通しを立てたのであります。

以来レイアウト案を進め、10月下旬に最終的レイアウト案を提出することができました。

10月29日の吉日をトして地鎮祭が執り行われ、清水建設株式会社によって建設工事の一歩が踏み出されました。

1958年9月に作成された図面「コース基盤建設に関する仕様見取図」1958年9月に作成された図面「コース基盤建設に関する仕様見取図」

コースの良否を運命づける用地の調達については、私なりに無理を言って、非常な困難の末取り纏めを願った箇所も数多くあります。その結果レイアウトはあまり無理なく取ることが出来ました。然し、レイアウト上最大の難点となりましたのは、現在のNO1,2,3の地域が用地の形の上からも、又地形の上からも分離している点で、此の3本はたとえ之を逆廻りの形に配置しても何処かに無理が出るのであります。

もしこの3本に相当する面積が、現NO14のティー後方の地域にでも振り替えることが出来ていたら数等優れたレイアウトになっていたことと思います。

ダイナミックかつ各ホールが独自のキャラクターを持つそんなコースを創るダイナミックかつ各ホールが独自のキャラクターを持つそんなコースを創る
ダイナミックかつ各ホールが独自のキャラクターを持つそんなコースを創るダイナミックかつ各ホールが独自のキャラクターを持つそんなコースを創る
  • 枚方の設計に当たって私が意図しました要点を申し上げて見ますと、まづ第一に全体的に成るべくこせこせしない雄大なコースを作る方針を採ったことです。従来関西のコースは概して地形が細かい起伏にとんでいるため、繊細な感じを受けるコースが多かったようであります。枚方の場合は原地形が雄大であり、谷や尾根の移り変わりも非常にスケールが大きく、ゴルフコースとして利用しうる微妙な自然地形の変化といったものは余り感じられませんでした。

  • 一方地域全般にわたっては非常に変化に富んでいて、これを適宜組み合わせることによって各ホールはそれぞれ独立し、そして皆異なった性格を持つことが望めたので、これを第2の狙いとしたのであります。

    つまり一言にして申しますと、「非常にダイナミックなコースであって、しかも各ホールがそれぞれ独自のキャラクターを持っている」ということでしょう。果たしてそのような気分をお感じいただけますでしょうか。

開場当時の姿開場当時の姿開場当時の姿

翌昭和34年9月24日秋分の日開場を迎えました。秋に着工し、春芝張りを行い、翌秋開場するという最も理想的な工事工程によったとは申せ、これだけの大工事を事故もなく、一年足らずの短期間にやり遂げられた清水建設の関係者の方々の技量と熱意に対して、深く敬意を表するものであります。

工事は完了し、ゴルフコースとしての形は一応出来上がったものの、ここの土質は前にも申したようにあまり良くない、と申すより私の知っている関西地区のコースの中では一番痩せていると申しても過言ではないと思います。だから開場前の芝の成育も、他のコースに較べてなかなか良くならないのです。

10周年記念 寄稿 Contribution

グリーンキープについては大変なご苦労を煩わした訳です。しかし、現スタッフによる絶え間ない努力は見事実を結んで、既に数年このかた他コースに勝るとも劣らない立派な芝生状態を保ち続けて居られること、ただ嬉しく思う次第です。芝生の維持に有効な農薬、肥料、土壌改良剤などが次々に開発されている現在これらの利用と相まって今後一層美しいターフが仕立てられるこ とと期待しています。

レイアウトも幸い大過なかったようで、開場後の樹木の風倒、枯損のためバンカーを数個増設したり、或いは最初からの難点であったNO.1の左尾根部分の模様替えを行なった程度の改修に止まり、根本的な改造を必要とした点もなく、まづ順調に発展の一途を辿ってこられたことは誠にご同慶の到りに存じます。

10周年記念 寄稿 Contribution

今回開場10年史を発行されるにあたり、寄稿の栄を与えられましたことは光栄の至りでございます。

この機会に箱根湯本以来終始私を信頼し、設計に関する総てを任して下さいました尾上理事長、松田社長、石丸支配人をはじめ各位の御引立てに対して心から感謝申し上げます。

今後ますます倶楽部が繁栄されんことを祈って筆をおきます。

コース設計者井上 誠一